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質問:クロロフィル蛍光について 登録番号: 2615
2012-03-14
クロロフィル蛍光について調べています。植物から放出されるクロロフィル蛍光は、吸収した光の内、光合成に使われることなく、また熱としても変わることなく余った部分だと思っていますがあっているのでしょうか。
また、調べた参考文献(植物の計測と診断,P73)によると、光化学系Uの電子受容体Q(QA)が還元状態であれば蛍光強度が高く、参加状態なら蛍光強度が低くなるとあるのですが、酸化還元状態ではどのようなことが起こるため蛍光強度が高くなったり低くなったりするのですか。
一般
N
回答
N さん

ご質問をありがとうございました。

(最初の質問への回答)

「植物から放出されるクロロフィル蛍光は、光合成色素に吸収された光エネルギーのうち、光合成に使われず、また、熱にも変換されなかった部分である」との見解は正しいと思います。

ただし、この機会に多少の補足説明をさせていただきます。

一つのクロロフィル分子に注目した場合、吸収される光エネルギーは(電子的な)励起エネルギーの形で一時的に分子内に取り込まれ、分子の励起状態が形成されます。
励起状態の分子が基底状態(もとの状態)にもどる過程で、このエネルギーは(1)光化学反応に使われたり、(2)熱として放出されたり、(3)分子の別の状態(例えば、三重項状態)を経由して、熱や燐光の形で外部に放出されたり、また、(4)隣接する分子(もし適当な分子が隣接していれば)に伝達されるなどの運命をたどることになります。なお、(1)の場合には、エネルギーを受けとった分子が化学変化を起こすことになります(光合成の場合の化学反応は、クロロフィル分子から電子受容体分子への電子の移動です)。

実際の光合成系では、色素分子(蛋白質に結合したクロロフィルなど)を含めた数多くの成分がシステムを構成しておりますので、事情が複雑になります。この状態ではクロロフィル蛍光の収率が非常に低いのが特徴で、系には吸収された光エネルギーを状況に応じて熱の形で積極的に放散させる仕組みも備わっております。


(二番目の質問への回答)

光合成で核となるのは、クロロフィルなどの色素に吸収された光エネルギーを利用して、水などの外部の電子供与体の電子を無機化合物の還元に利用する電子伝達系の作動です。

ところで、光化学系IIの電子受容体QA(蛋白質に結合したプラストキノン)の酸化還元状態には、光化学系からの電子を受けとることが出来る状態である酸化型と、電子を受けとることが出来ない状態である還元型があります。後者の場合は、光合成の光化学反応によって供給されるエネルギーが利用できない状態ですので、クロロフィル分子の励起エネルギーが蛍光として放出される確率が高まることは一般論として理解できることかと思います。ただし、実際の光合成系は前述のように複雑ですので、光化学反応で送り出そうとする電子を電子伝達系が受けとれない状態にある時、どのような仕組みが働き、どの時間帯に観測される蛍光がどのクロロフィル分子から放出されるかを完全に理解することは今後の課題かと思います。

もし理解し難いところがございましたら、再度、ご質問をお寄せ下さい。

佐藤 公行(JSPPサイエンスアドバイザー)
2012-04-05
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行

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