一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

チェックリストに保存

植物生理と農業について

質問者:   公務員   大鯰
登録番号3022   登録日:2014-02-18
農業指導に従事しているものですが植物の生理と栽培に関してなかなか関連付けて理解して、農家に指導することが難しいです。

農業ではいろいろな要因がはいってしまうため、植物生理の面で全てが解決できないと思いますが基本的な考えた方意識しておかなければならないと思います。

そこで、植物生理と現場での栽培に関して系統だてて説明した本はないのでしょうか
(全ての栽培品目にあてはまらないのは承知しております)

例えば摘心とホルモンの関係、脇芽が伸びるのはよく見かけますが

各種の環境ストレス(長雨、低温など)に対して光合成能力や根の力などを高めるための栽培管理、葉面積指数と葉の摘葉の関係など、

よろしくおねがいいたします。
大鯰 さん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
結論から申し上げますと、たいへん残念ながら「植物生理と現場での栽培に関して系統だてて説明した本」は著わされていないと思います。その理由にはいろいろあると思いますが、植物生理学は今までのところはまだ多くの(すべてではありません)植物に共通する現象、過程の仕組みを取り扱っているに過ぎませんが、農業の現場からの問題の主なものは各作物、各園芸植物の品質向上などにつながる栽培管理の各論的な取り組みが主体となっているためと思われます。農業現場では経験的に得られた知見、技法が豊富にあり、それらは作物学、園芸学の分野で、現象、対処法まではかなり詳しく記載されていますが、「どんな仕組みでそうなるのか」について農学的にも生理学的にもまとめるほどの知見が蓄積していないのが現状です。
とは言え、農業上の問題が植物生理の問題であることはたくさんありますので、そのような課題などについては植物生理学や作物学、園芸学の教科書などには記載されています。例に挙げられている「摘心とホルモンの関係」は頂芽優勢の問題として植物生理の、「環境ストレスと光合成」は環境ストレスと物質生産、ストレスに対する光合成の応答の問題として植物生理、作物学、園芸学の教科書などに記載されている部分はあります。しかし、「…のための栽培管理」とか「…と摘葉管理」といった栽培管理に関する課題などは植物生理学の対象ではなく、むしろ作物学、園芸学の主要課題でもあり技術的、各論的にかなり詳しく記載されているはずです。ご質問はそれ以上の理解を求めておられますので、個別に調べるしかなさそうです。植物生理学、作物学、園芸学、栽培学などの参考書に頼るのが早い方法でしょう。
まとまった書籍では、「農山漁村文化協会(農文協)編 農業技術大系」は参考になると思います。膨大で高価な出版物で個人が持つようなものではありませんが、図書館(地方でも中央図書館的なもの)にはあるはずです。また、インターネットの情報は正しく選択すればたいへん役に立ちます。ご質問に関連する調べ方として、「農業上の問題点を、どのように植物生理の課題に翻訳してキーワード化するか」といった作業が必要になってきます。この点に関しては、この質問コーナーはかなりお役に立てるのではないかと思います。栽培上で観察される水、温度、日照、物理刺激などの環境要因に対する作物の反応などについては研究もかなり進んでいる面もありますので、具体的問題としてご質問いただければある程度のお答えはできるかと思います。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2014-02-19
植物 Q&A 検索
Facebook注目度ランキング
チェックリスト
前に見たQ&A
入会案内