一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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バラの枝の先にある芽(葉)が赤い色なのはなぜですか。

質問者:   小学生   さくらももこ
登録番号2053   登録日:2009-08-18
 バラの葉は緑色なのに、枝の先にある葉(芽)は赤い色をしています。他の植物でも、葉が小さいときは赤い色をしているものを見たことがあります。
枝の先の葉が赤い色をしているのはなぜですか。
さくらももこ さま

バラの枝の先端にある新芽の葉が、なぜ赤い色をしているかについてのご質問ですが、この様な枝の先端についている若い葉が赤くなるのは、多くの植物について見られています。特に、春、新緑の頃、落葉樹の新芽が緑になるまで、しばらくの間、赤くなる種が多く見られます。バラの場合も、赤い色をしている新芽に印をつけておき、枝が伸びると印をつけた赤色の葉が、クロロフィール(葉緑素)の多い緑色になっていくのが見られるはずです。このことから若い葉は赤色ですが、枝が伸び赤い若い葉が成長するにつれ、赤色が消え成長した緑色の葉になります。
 
若い葉に含まれている赤色はアントシアニンとよばれる色素ですが、葉の細胞の中では主に液胞とよばれるところにあります。一方、緑色のクロロフィールとよばれる色素は、光合成が進行する葉緑体に分布し、これによって植物にとって重要な二酸化炭素の固定(光合成)が進行します。
 
それではなぜ、若い葉がアントシアニンをたくさんもっていて赤色に見えるのでしょうか?若い葉は赤く見えますが、クロロフィールはゼロではありません。若い葉は光合成を進行させるための葉緑体を作り上げている段階ですが、まだ、太陽光の強い光、太陽光に含まれている紫外線による害作用を防ぐことはできません。ヒトが海水浴に行けば太陽光によって皮膚が日焼けでヒリヒリしますが、葉も同じように可視光、紫外線によって生ずる活性酸素による害作用を受けます。若い葉はこれらの光による害作用を充分に防ぐことができないため、アントシアニンによって太陽光を遮り、葉緑体が害作用を受けないようにしていると考えられます(ヒトの皮膚の日焼けを防ぐための“日焼け止めクリーム”のような役割)。しかし、葉が成長して、葉緑体に太陽光の害作用を防ぐ機能が充分に発達すると、アントシアニンによって太陽光を遮る必要がなくなるためにアントシアニンはなくなり、葉が緑に見えるようになります。

葉や根がアントシアニンによって赤くなることについて、本質問コーナーの質問登録番号2027, 登録番号2045に対する回答にも参考になることが記されていますので、これらもご覧下さい。
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2009-08-24
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