日本植物生理学会
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植物科学のトピックス
講演に対する質問と回答
吉田先生への質問

三村 吉田先生、どうもありがとうございました。それでは吉田先生が出された植物科学クイズの質問があります。

Q.「1番、花びらの組織について。2番、アントシアニンを試験管の中で溶かした時の色について。3番、4番、5番とありますので、お手もとにある解答用紙でどれが正解だろうとご解答いただけるでしょうか。最後の問題、何かヒントはありますか?」。

A.5番。バラの花は液胞のpHが低いです。アジサイよりも低いくらいです。3.5とか3.6。入っている花の色素はシアニンという単純な色素です。ブドウの色素と同じような安定性だと思ってください。白い花はアントシアニンの色素は入っていない。ただしフラボンとかポリフェノールというような無色の紫外線だけを吸収する色素が必ず入っています。紫外線は毒なんです。人も日焼けしますが、植物にとって毒なので、それを日焼け止め成分としてフラボノイド、ポリフェノールを植物は持っている。逆にそういうものを獲得した植物だけが、生き物は海の中で最初生まれましたが、陸に上がって現在まで繁栄して地面の上で育つということです。

三村 質問があったらぜひどうぞ。

Q.「アジサイに白い花がありますが、これは色素が入ってないんですか。時にピンク色になったりブルーになることもあるんですが」。

A.白い時はアントシアニンと呼ばれる色素が入っていない状態が一般的だと思います。最初、白いがだんだん色がついてくる。最初、色がついていたのが消えてくる。その時にアントシアニンが細胞の中で生合成されてきて色が出るということだと思います。

Q.「ヤグルマギクと赤いバラですが、同じ色素と助色団を持っているということですが、それが一方は青色になり、一方は赤色になるのはどういうメカニズムからですか?」。

A.赤いバラはシアニンという色素がメインですが、ヤグルマギクは、スクルニルシアニンという発色団に関係ない部分で少し有機酸がついた構造をしています。今週の『ネイチャー』に載りましたX線結晶構造から言いますと、ツユクサと同じようにアントシアニンが6分子、フラボンが入っています。マロニルフラボンという名前がついています。そのフラボンが6分子、3価の鉄イオンが1つ、二価のマグネシウムイオンが1つ入った超分子です。構造的にはツユクサとよく似ています。ツユクサはマグネシウムイオンが2つですが、ヤグルマギク場合は一つが鉄イオンです。それも5ページの図3、天然のアントシアニンの構造と発色団がありますが、ユクサはR1、R2の部分がヒドロキシル基、OHがついている、どちらも。ヤグルマギクはR1はOHですが、R2はHなんです。そこに発色団の構造のわずかな違いがあります。酸素が3つあるツユクサではマグネシウムイオンとの錯体で青色を出せるんですが、ヤグルマギクはマグネシウムイオンの錯体は紫色です。鉄イオンの錯体をつくることによって青くなることがわかっています。常磁性、鉄は磁石の性質を帯びるような元素、そういう金属イオンとアントシアニンが錯体をつくることによって酸素の数が少ないものでも青色を出すことができます。

 サントリーがカーネーションとか青い色をつくる時にめざしたのは、R1、R2を全部OHにするということです。バラとかカーネーションはR2にOHをつける酵素を持っていない。他の植物からR2の部分にOH、酸素を入れるという酵素の遺伝子をとってきて入れてつくらせることによって青い花をつくらせようとしたんですが、まだまだ成功していない。酸素が3つあるからといって青くなるわけではない。必要条件ではありますが、十分条件ではない。

三村 あとでカーネーションを見ていただくと、ほんとにきれいな紫と言っていいような、まだ青いバラは夢の世界かもしれません。吉田先生の話はここまでとして、解答は休憩の時間に。最後に答え合わせと質問の時間を設けたいと思います。どうもありがとうございました。

塚谷先生への質問

三村 14ページに塚谷先生につくっていただいた問題があります。聞いていればわかる問題だということですが。

塚谷 一応、ヒントは話の中で言ったつもりでした。お気づきになっていると良いのですが。

三村 どうでしょう。でも4番はどうでしょうね。

塚谷 渓流沿い型の植物には、たくさん種類があることはわかっています。それぞれ祖先型がいると思われていまして、いずれもわりとごく最近になって、渓流沿い植物に進化したものです。つまり、祖先型はごく普通の形をしていて、葉っぱは広い形をしています。祖先型と渓流沿い型の違いは、葉っぱが細いかどうかと、根っこがしっかりしているかどうかと、そういうところだけ、性能が違うんですね。結果としては、葉が細いので、光合成の能力はずいぶん違うと思います。

三村 質問がおありでしたらどうぞ。

Q.「朝日新聞の8月に載っていたものですが、花を咲かせる遺伝子がわかってきたと。その中で、FTタンパクが花から芽にどのように輸送されているか、これからの課題だと。そこのところ、仕組みがわかっていたら教えてください」。

A.FTに関しては輸送のしくみは、まだわかっていません。あれは謎でして、発現している場所と働く場所が全く違うので、絶対、輸送されていなくてはいけないのですが、今のところどうやっているのか、わかりません。一般論として芽、茎の成長点、僕らの言い方ではシュートアピカルメリステム(shoot apical meristem: シュート頂分裂組織)ですが、そこで植物は形づくりをしていて、そこで葉っぱとか茎をつくり続けるのですが、作られた葉っぱはもうシュート頂分裂組織と関係ないわけではなく、できあがった葉っぱからそのシュート頂分裂組織に向かって常にシグナルは送り続けているみたいです。実際、いろんな現象が、葉っぱから茎頂に対して送られているシグナルに制御されていると思われています。例えば葉っぱでも陰葉と陽葉とがありますね。植物をものすごく太陽光の強いところで育てると、葉っぱが厚ぼったくなります。これを陽葉といいます。逆に薄暗いところで育てると、陰葉という薄べったい葉っぱになります。ところが、シュート頂分裂組織の、まさに新しい葉っぱをつくっている場所に、いくら強い光を当てても、すでにできあがった葉っぱが薄暗いところにあると、新しくできた葉っぱは、薄暗いところ用の葉っぱになってしまいます。これは、すでにできてあがっていた葉っぱから「今は薄暗い」というシグナルが、芽(シュート頂分裂組織)に向かって送られているからのようです。逆に芽のところを真っ暗にしておいても、できあがった葉っぱに強い光を当ててあげれば、強い光用の葉っぱをつくります。ですから葉から何か送られているのは確かで、僕らのところでも何を送っているのか調べているんですが、いくつか候補はあるものの、まだこれだということがわかっていません。植物では、同じような現象がいろいろあって、そうした仕組みで常に植物は、全身の状態をモニターしているみたいですが、それは今後の植物生理の大きな問題の一つだなと思っています。

Q.「ヒイラギの葉っぱが場所や時期によって形状が違うと思いますが」。

A.それに関しても昔から議論がありまして、若い時の葉っぱと、年取った時の葉っぱの形が違うという現象が、いろんな植物で知られています。この現象は、ヘテロブラシティ(heteroblasty)という名前がついています。ヒイラギの場合は一般に若い時の葉っぱほどトゲトゲしていて、成熟して年取ってくると、人間と同じで丸くなってくるんですが、そういう木でも強い剪定をして若い枝をむりやり出させると、そこはまたトゲトゲしてきます。勢いがあるところはトゲトゲしてきて、落ちついてくると丸くなる。なぜなのかに関して、一つの説としては、植物の体内で作られるサイトカニンというホルモンの分布が変わるため、それによって葉の形が制御されているのだ、という説があります。同じようなことがエビヅルの葉っぱにもあって、切り込みの深い葉っぱをつくったり、食べるブドウの葉のように全然切れ込みのない葉っぱをつくったりする場合も、そういうホルモンのバランスの変化があった、というデータがあります。ただ、それだけにしては変だというのが、今のところの僕らの印象で、もう一つファクターがあるのではないかと思っていますが、現時点で有力なのは、今申し上げたような、「植物ホルモンのレベルが植物の生理条件で変わるためだ」という説です。

 ちなみに、葉の輪郭の形に関しては面白い現象が昔から知られています。というのは、年平均気温が高くなれば高くなるほど、その地域に生えている植物の葉っぱの縁はなめらかになるということが知られていて、それが、化石をもとにして、その場所がどういう気候だったかを調べる時の一つの指標になっています。これはかなり正確に相関があるそうです。つまり、化石として出てくる植物の葉っぱが、どれだけギザキザしているかと、そこの気温がどれだけ高かったかということとが一致しているというわけです。しかし、なんで気温が高いとツルツルしてくるのかについては、全然わからないというのが現状です。

三村 私も知らないことばかりですが。解答の方もいかがでしょう。それでは塚谷先生、どうもありがとうございました。
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