皆さんは酵母という生き物を知っていますか (図)。酵母自体は知らなくても、私達は色々な酵母の恩恵を受けているのです。例えば、パンを作るとき、小麦粉を発酵させますが、これはパン酵母を使っているのです。またお酒を造るときにも酵母を使ってアルコールを作り出しています。このように私達人間は酵母を昔から利用してきたのです。酵母は単細胞の真核生物で、子嚢菌というカビの仲間です (図)。細胞一個からなる非常に単純な生き物ですが、動物や植物の細胞が持っている細胞内の器官を一通り備えています。酵母はゲノム構造の単純さ、扱いやすさから、古くから真核生物のモデル系として用いられていて、現在では全ゲノム構造をはじめ、非常に多くのことがわかっています。
さて、酵母にも小さいながら液胞が存在します。酵母の液胞の働きの中で重要なのが自食作用というもので、文字どおり自分で自分を食べてしまう機能です。そんなことをして何の役に立つのでしょうか。酵母は生きている環境条件が悪くなると胞子を形成しますが、その時に細胞質の成分を小胞に囲い込み、その小胞を液胞内に運び込んで、その後液胞内で消化し、その成分を胞子形成に利用します。これを自食作用 (Autophagy) といいます。酵母の自食作用に関係している遺伝子は多数単離され、それらの機能が今精力的に研究されています。
また植物も光が当たらなくなるなど飢餓条件にさらされると自食作用が起こることが判っています。酵母の自食作用に関わっている遺伝子と親戚のたんぱく質も植物で見つかっていて、酵母と植物は同じようなAutophagyのメカニズムがあると推定されています。
・自食作用(Autophagy) とは