櫻井 そこでメロン。高いですね。夕張の方に卒業生が就職して夕張メロンを6個送ってくれましたし。うれしくてね。1つ目食べたら早かった。1週間おいて食べたら全部だめだった。すごく悔しくて、よし、メロンから始めようということです。「雅春秋」 は高知でつくられているエメラルドメロンという名前の1品種です。これを何十個と買ってきて、0日目から16日目くらいまでテーブルに置いておいて毎日計るわけです。毎日計りながら3個ずつ食べていくという実験をしました (図7)。おいしい実験だと思うでしょう。とんでもないですよ。ここらへんは腐っているわけです。腐っても食べなければいけません。だから人生と同じで、酸い甘いもかみ分けながら実験しないと、とれないデータです。「ベネチア」 とかいろんな品種を使いましたが、大体、直線的に硬さが変化していくことがわかりました。
その時に食べた状態を点数で評価します。未熟だなと思ったら5点、丁度いいなと思ったら3点、腐ってへんな臭いがして、いやだなと思ったら1点をつける。そういう実験をやりながら硬さを計っていくと、硬さと実際に食べた時の評価がぴったり合います (図8)。硬いものは未熟で軟らかいものは過熟で、丁度いいところに硬さが直線的に、いい関係にあります。驚いたことに同じメロンを切って糖度を計ったのです。糖度と実際に食べた時の関係は、全く相関がないのですね。糖度ではメロンの場合は熟度がわからないこともわかりました。このグラフは大事で適熟、食べ頃を2~3の範囲だとすれば、この線を逆に見ていますと、5~8くらいのところが食べ頃の硬さだということがわかるわけです。逆に言うと9、10の硬さを示すメロンはまだ早い。8くらいだとそろそろ、5だと早く食べなさい、4になったらだめですよということが、このグラフからわかるわけです。実際にたくさんの品種のメロンをやってみました。雅春秋をベネチアと比べますと、雅春秋はゆっくりとやわらかくなります (図9)。ベネチアは急激に落ちてきます。これを見てみると、雅春秋はゆっくりと軟化が進みますから、食べ頃、ニコニコマークの期間が長い、8日間。しかしベネチアのように早く軟化するものは食べ頃が短い。これを全部実験のために私は食べました。何が一番好きか。もちろんベネチアです。これはすばらしい。この食べ頃の時に食べるととろけるような食感、甘味、香り、申し分ない。雅春秋はずっとキューリみたいで、いつまでも硬くて本当に熟したのかなと。多分ここらへんだったのだろうと思って食べる。本当にうまいのはベネチアです。だけど今、日本のメロンはどのようになっているか。雅春秋がだんだん増えています。なぜですか。流通から考えると長い間、食べ頃のものを売っていればクレームが少ない。だから生産農家にこれをつくってくださいとお願いします。食べ頃が短いのを売っていると文句が来るわけです。そうすることによって確かに食べ頃は長くなるかもしれませんが、おいしいメロンが人々の口に入らなくなってきました。それでこの10年間、高級メロンと呼ばれるものの出荷量、販売量が落ちていることを大手スーパーの販売の方が言っておられました。つまり流通とか小売りの論理でものを選んでいると、本当においしいものが消費者の口にあがらなくなるという一つの例です。
それではいかんとベネチアをちゃんと食べ頃であることを知らせるような装置をつくりたいということで装置をつくりました (図10)。名前は 「食べ五郎」 (笑い)。1号機は木琴のバチのようなものでメロンをポンと叩かないといけないのでカッコ悪い。何とかしようと思って、置けば計れる、精度はレーザードップラー装置と同じでボタンをちょっと押すだけで、食べ頃は2日後ですと出るような装置をつくりました。