6.果物の硬さを振動で測定する

櫻井 それでそれを使って果物に非常に微弱な振動を与えて、その振動を果物のてっぺんにレーザー光をあててレーザードップラー振動計で計ると果物がどのように振動しているかということがわかるわけです (図4)。どのように振動するかということが果物の塾度、硬さに関係しているのかどうかを知りたいので研究を始めたわけです。実際にこれが初期の頃、フジというリンゴの振動を計った時のデータです (図5)。このデータは振動装置に低い振動から高い振動まで順番にリンゴに当てていくわけです。最初はブーンという音からウーンという音まで高い音に振動させて、縦軸にリンゴはどのように振動したかをとります。強く震えると上に、震えなかったら下へ線が上下します。そうすると低い音からだんだん高い音に来て、リンゴはある特定の周波数のところで強く振動することがわかりました。これを 「共鳴」 と言います。共鳴という現象はバイオリン、ギターの木の箱の中で行われていることと同じですね。音を大きくするためにギターやバイオリンの箱は共鳴箱として使われているわけです。これと同じことです。バイオリンやギターは実は特定の音に共鳴しないように、いろんな音に共鳴するように、わざわざ複雑な形をとっていますが、リンゴは簡単な丸い形をしているわけですから特定の音、90Hz、1秒間に90回震えるような振動で大きく振動する。90回くらいの振動は私たちの耳に十分聴こえます。チェロの低音くらいです。ここに2番目のピークがあります。これは大体800Hz、1秒間に800回振動している時にリンゴが一番よく振動するというグラフです。800Hzはどれくらいの音か。ラジオなどで時報を、ポッ、ポッ、ポッ、ピーという音を出します。ポッポッポッという音が440Hzです。ピーという音が880Hzです。ピーという音にリンゴはよく反応するということになります。

このリンゴを実験室のテーブルの上に置いておいて、10日目、21日目に同じリンゴをレーザードップラー装置で計ると、これが10日目、21日目というふうに最初、800~900Hzにあった共鳴点がだんだんと低い音の方にシフトしていくことがわかりました (図6)。また21日目では高い周波数ではもう共鳴しなくなっていることもわかりました。

なぜこういう方法で果物の硬さ、熟度がわかるのか。未熟な硬い果物は鉄球のようなものです。これをピンと弾くと硬い音がします。高い共鳴振動数を持っている。過熟になると中は腐ってしまいますが、ゼリーのようなものだと考えてください。手でピンと弾いてもボヨヨンという感じで音が聴こえるかどうか知りませんが、ゆっくりと振動します。だから共鳴振動数は低いわけです。硬いものが軟らかくなる間に、適熟、食べ頃の硬さがあるはずですから、食べ頃の共鳴振動数が、必ず存在するはずだというのがアイディアです。実際に物理の理論ではこの硬さは振動数の2乗×重さの3分の2乗でわかると書いてあります。これで振動数を計れると果物の熟度がわかるという理論的な背景がわかりました。

前を読む 次を読む


※ 本ホームページの市民講座に収録された研究内容・図表は日本植物生理学会に帰属します。これらの研究内容・図表を元に作成した著作に新たなコピーライトの設定は認めません。二次利用に際して、研究内容・図表の提供者である講演者のクレジット保護にご配慮ください。