5.レーザードップラー法との出会い

櫻井 松下パナソニックの和田さんが来られまして、名刺交換して、いろんな説明をしたのです。いっぱい説明したつもりなのに 「櫻井さんは、結局、何がしたいのですか?」 と言われたのです。ちっとも伝わっていない、と思いました。でも、和田さんはもっと深く考えておられたのです。私は音波とか音とかばかり考えていたのですが、和田さんは 「これは振動ではないのかな」 と思っておられた。僕はわからないから 「果物の硬さを切らずに計りたいのです。」 この一念です。そうすると和田さんが 「いい方法かもしれませんから帰ったら資料を送りましょう」 と言って別れたのです。普通、こう言って別れた後、1枚のペラペラの紙が来たり、なしのつぶて、だったりすることが、よくあります。本当に送ってくれるのかなと思っていたら、1週間後、とても分厚い封筒が届きました。私は夢中で読みました。その中にレーザードップラー法というのがありました。今でも覚えていますが、スパイができるという装置を販売しているパンフレットがありました (図3)。実際に売っているのです。某国で2,000万円で売っている機械です。レーサードップラーという装置のレーザーを窓にあてる。私の声が空気を震わせて窓のガラスを震わせています。向こうの方の屋上から、その窓を目掛けてレーザー光を出す。レーザー光は反射して元に戻りますが、私がしゃべっている振動も一緒に乗ってレーザー光が拾っていく。その振動をスピーカーに流すと私の声が聞こえるわけです。盗聴できるというわけです。2,000万円です。なかなか高いです。窓の微弱な振動を検出すると話し声が聞こえる。レーザードップラーは非常に微弱な振動を検出する方法として、実際に工学系で応用されていました。CDが回っている時にぶれていないか。車のギアボックスの中の軸は、なるべくスムーズにまわるように歯車の形を考えますが、こういう形にしたら軸がぶれないかな、ということをレーザードップラー装置で計っているわけです。工学系の人たちはよく知っている方法なのですが、もちろん私は全然知りませんでした。

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