3.トマトの硬さを測定する

櫻井 実はこの技術の開発の発端になったのは1991年、カリフォルニア大学の先生にトマトの硬さを測定してほしいと依頼されたことがきっかけになっています。カリフォルニアのデービスという町の直径100キロの円周の中は世界の加工用トマトの4分の1を生産するという、一大トマト生産地です。加工用トマトというのはケチャップ、トマトソース、缶詰のトマトや料理用のトマトでお馴染みのものです。そういうトマトをたくさん生産している場所に近いところですからトマトの研究をすることは大事なのですが、実は私を呼んだ先生はトマトを全く研究していなくて、私にお願いだからしてくれと言われました。そこでああ、いいですよと行ってやりました。

その方法ですが、トマトのスライスを台の上に載せまして、ジャバラの空気を抜きますと縮みます。そうすると針がトマトのスライスの中に突き刺さっていくわけです (図1)。5ミリ突き刺しなさいと命令を出すと5ミリのところでピタッと止まる。その時、ここにセンサーがありまして、どれくらいの強さでトマトに針を突き刺した力がかかっているかということを感じることができます。硬いトマトは突き刺すのにずいぶん力がいります。軟らかいトマトはほんの少しの力で済みます。そういう力をここで感じるようにしてあるわけです。たとえば緑、ピンク、赤とだんだんと熟度が上がっていき、その時に針を突き刺し、縦軸に針を突き刺した時の力、横軸に突き刺した後、どれくらい時間がたったら、その力がどう変化したかということをグラフに描きます (図2)。硬いトマトには大きな力がいりますから、大きな力から始まります。最初は力に抵抗しているのですが、ずっと針を突き刺したまましておくと、トマトにだんだん抵抗力がなくなっていき、力がだんだん下がっていきます。最初の力はピンクのトマト、つまり少し軟らかくなったものは少し低い。赤いトマトはもちろん一番低いです。これによって突き刺した最初の力がトマトの緑から赤、熟度が進むにつれて小さくなる。これを物理学的な言葉で言うと 「弾性率が低下する」 と言います。バネの力が弱くなっていくのと同じです。それだけではなく、直線を見ると下がり始める時間に違いが出てきます。力の下がり始まりの時刻が緑、ピンク、赤になるにしたがって速くなることは 「粘性率」 が下がる、つまり粘土がだんだん軟らかくなっていくことと同じ意味です。この測定方法を 「応力緩和法」 と言います。大学4年生の時の先輩の山本先生が開発された方法です。私はこれをトマトに応用してトマトの硬さを弾性率と粘性率が下がっていくのだということを発見して雑誌に書いて発表し、とても有名な雑誌に載りました。それで鼻高々で日本に帰ってきたのです。

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