講演に対する質問と回答

長谷部先生への質問

司会 どうもありがとうございました。ここで質問がありましたらどうぞ。

Q.「講演で、クレマチン収束酵素について、切り離すと発現するようになると聴きました。切り離したことによって、光はそれが発現するようになるのとは関係ないかなと聴いたんですが、どういう物質が、切り離すとできてということについて、お調べなのか。光は、どういうかかわり方をしているのを教えていただきたいのですが。」
A.それは僕も教えてほしい問題でね、物質ですよね、きっとあるんですよ、それが。あそこで切った時、何かが出て、それがあると変わるんですよね。それをどうやってとっていくか、今、一生懸命考えているところで、その間にどんな物質がかかわっているか、細かく調べているところです。まだその答えはないです。

Q.「今、環境が大事であると伺いましたが、50年後には地球の大気温度が6℃上がると。私は朝顔を栽培していますが、タネつきが悪い。温度が高いとタネつきが悪いと書いてあってのですが。中日新聞に載っていましたが、貿易センタービルを爆破したビン・ラディンが投稿していたそうです。何十年か後、地球は灼熱状態になって食糧の奪い合いの戦争が起こると言明したと。あんなテロを起こした人が地球の将来のことを言うのはおかしいと思うんですが、しかし聞き捨てならないのは6℃大気温度が上がれば、実りがなくなるのではないかと懸念があるんですが。」
A.6℃と言わず、温度が上がるのは非常によくないです。絶対にやめないといけない。小まめに電気を消す、むだなゴミは出さない。ほんとにやめた方がいいですね。コケを培養して停電の後、エアコンのスイッチを入れ忘れて2℃あがったら、ほとんど死んじゃいます。地球温暖化は絶対に下げなければいけない問題なので、皆で考えて実行していかないと思います。現実の問題です。

Q.「コケで切り落とした方は新しくどんどん出るが、切った本体の方は出ないと。同じように切った刺激があるのに、なぜ本体の方は出ないと思われますか?」
A.どう思います?

Q.「本体についているから、部分化しないように止めているストッパーがあるのかなと思っちゃうんですが。」
A.僕もそう思っていて、それを調べるにはどういうふうに実験したらいいと思いますか?

Q.「切った本体ではなく、切り落とした側で遺伝子の違いを調べたらいいのではないかと思います。」
A.それはすごくいいアイディアですね。僕たちも一つ実験してみたんですよ。どこかから再生を抑えるような物質が出ているのではないか。再生する時は葉っぱが幹細胞、芽になる。芽になるというので、最初の茎葉は芽がある。同じもの同士はつくりにくくなることもあって、植物はずっと伸びていくんだけど、上をちょん切ると脇からまた芽が出るでしょう。あのイメージで、もしかしたら茎葉の先端に、そういう抑えるものを出しているのではないかと思って芽をちょん切ったら少し出てくるんです。もしかしたらそれかもしれない。そこはまだよくわからない。

Q.「コケは切ったら切った方から全体が再生する。動物の場合は逆で足からは再生されなくて全体で再生するという感じだと思いますが、動物と植物の再生のしくみの違いということで、部分から全体が再生されるのか、全体から部分が再生されるかに注目した研究はされていないんですか?」
A.それはすごくいいポイントだと思いますね。確かにそれが動物と植物の大きな違いで、今日、僕がお話したのは細胞がどういうふうに変わるかということにフォーカスを置いたんですが、質問のように器官がどういうふうに再生するかという点も研究は進んでいます。ただ実際にどういうメカニズムで違いが生じているかはよくわからないんですが。
概略としては植物の場合、1つの細胞が幹細胞にすぐなれて、それが独立に動けるようなんです。植物の細胞というのは、動物の細胞ほどは仲良くない、互いに。かなり個別性を持っているものが身体の中にあって、動物の細胞は手の場所にあると、他の細胞からの影響を受けて必ず手になるという情報が濃いのではないか。その違いは植物と動物でどう違ってくるのではないかと考えられているのですが、実際のところはよくわからないというのが現実です。今後の課題ですね。

Q.「イオンチャンネルあると、切るということで、本体の方にカルシウムが切られた方に来なくなって、幹細胞になるという形で、変わるのかなと。」
A.本体から今まで来ていたものが、なくなることによって、切り離して再生が起きるという可能性はあって、切り離して根元が再生しないことと、もしかしたら同じことになるかもしれない。本体の方から、イオンかどうかはわからないですが、抑える物質が流れている。それが来なくなることによって再生している。実際、物質は何か流れがあるかもしれないです。それがイオンかどうかはちょっとわからないですね、まだ。

Q.「ヒメツリカネゴケとイネですが、どちらも遺伝子の数が3万と出ていたかと思います。ものの本を見るとヒトの遺伝子も3万、3500という数字で、ヒメツリカネゴケは1ミリくらいの大きさで、イネも植物ですし、人と同じくらいの遺伝子だというのは素直に納得できないのですが、それは数え方の問題なのか、さらに遺伝子の種類を増やすしくみが別にまたあるのかということは、どの程度わかっているのでしょうか?」
A.そこもまた大事な問題で、ヒトの遺伝子がわかった時に、問題になりました。ヒトは複雑なので、ヒトのゲノムがわかる前にショウジョウバエのゲノムがわかっていて、それとほとんどヒトの遺伝子の数が同じだった。なんでそうなのかと。その答えが完全にわかっているわけではないんですが、1つの可能性の答えは遺伝子の数は3万ですが、RNAの数が違うということ。遺伝子DNAからRNAがつくられる時に、1つの遺伝子からいろんなタイプのRNAができたりする。ある遺伝子があるとその一部分だけを使ったRNAができる。一部分が削れたりする。その後、RNAがタンパク質になる。タンパク質になる時に、いろんな開閉を受けたりする。つまり、最終的にできるタンパク質の数は違うかなというのが1つの可能性です。
もう1つの可能性としては細胞が形をつくっていく時に、1つの細胞の中でいろんなタンパク質が働きます。それが3次元的な構造をつくっていきます。その時にそれほど多くのものを変えなくても3次元の構造は大きく変わったりしないかなと。たとえば細胞の固さをちょっと緩くすると、プリンをつくる時、固いプリンと柔らかいプリンだと柔らかいプリンはベチャッとなって平らになる。固いとしっかり富士山型になる。水の量だけですね。ちょっと変えただけで形はすごく変わる。そういうふうな3次元構造をつくるメカニズムは少しの遺伝子の変化で変えられるかもしれない。それが積み重なると人間とハエ、人間と植物の違いになったりするのかもしれないというのが、2つ目の可能性です。今のところ2つの可能性が両方ともありうるのではないかと考えられています。

司会 それではどうもありがとうございました。


松岡先生への質問

司会 どうもありがとうございました。質問があれば受け付けたいと思います。

Q.「松岡先生のお話で、Gn1を見つける時、DNAを削り混むという話がありましたが、そのやり方を教えていただけますか。」
A.交配して花粉と卵がそれぞれ染色体を持ち寄って子どもの受精卵ができます。その時に染色体の組換えが無作為に起こります。それを何回もやると、丁度問題にしている、「ここだけハバタキ」 の部分で組み換えが起こったものが出てきます。そのように、都合のいい部分で組換えが起こったものを、一生懸命探し出していきます。これは、人為的な遺伝子組換えとは違って、自然に起こる組換えです。

Q.「すごい個体数をやられると思いますが、どのくらい?」
A.私たちがやったのは2~3万です。

Q.「遺伝子の上でおいしさが決まってくる。つける実の数が多くなると、回せる栄養も少なくなるかなと思ってしまうんです。味などはどんな感じですか?」
A.よく出る質問ですが、味はわかりません。なぜ私たちが味の研究をしないかというと、話は簡単で、自分たちではおいしいか、まずいかがよくわからないからなんです。
私たちにもタネの数を数えることはできますが、味の研究はこれがおいしいか、おいしくないか見分ける能力が必要で、私たちの舌では味の違いはわかりません。もちろん、プロが検査すればわかるんだと思いますが。ちなみに、コシヒカリでも肥料をたくさんあげるとマズくなると言われています。ですから、プロのお百姓さんは少しの肥料をあげて、そんなにたくさん実らせない、それがおいしい米をつくる秘訣と言われています。

Q.「イネのゲノムを調べる時、日本晴という種を調べたということですが、なぜ日本晴を選んだんですか?」
A.今でこそコシヒカリが一番有名な品種ですが、コシヒカリのひと世代前に日本でよく食べられていて、栽培面積が大きかったのが日本晴という品種です。
なぜイネゲノムプロジェクトが日本晴を選んだか。それは、日本のグループが日本晴を主張したせいです。では、日本のグループがなぜ日本晴を主張したか。多分、偶然、皆が日本晴を使って研究していただけで、その時に使っていたのがコシヒカリだったらコシヒカリと主張したと思います。そして、なぜ日本晴を皆が使っていたかというと、60年代から70年代までは、日本晴が日本の中で一番食べられていた品種だったからです。

Q.「日本晴で調べてGn1がわかってきたと言われましたが、コシヒカリとハバタキについても、後から全部遺伝子を調べたんですか。」
A.コシヒカリと日本晴を食べると、ほとんどの人が味の違いはわかると思いますが、塩基配列で言うと、ほとんど違いはありません。コシヒカリも日本晴も、日本人が食べている米の塩基配列は、おおざっぱに言えば1万ベースに1ベースの違いしかないくらいよく似ています。したがって、日本人はすごく微妙なところでイネの違いを見分けているといえます。そういう意味で、Gn1の研究では日本晴もコシヒカリも違わないものとして考えて進めました。
一方、ハバタキはインディカ型なので日本晴とは、塩基配列が1000ベースに1ベースは違います。その違いを使ってGn1を調べたわけです。

Q.「遺伝子を全部調べたからわかったのですか?」
A.全部は調べなくても、違うところだけを調べればいいのです。10万ベースに1つずつ違う場所を全部調べていって、次に違う場所を目印に使って、さらにどこが違っているかを調べたわけです。

Q.「ゲノム研究が変える植物育種というタイトルと、遺伝子組換え食品というパンフレットが渡されたので、先生のイネの研究はイネ組換えイネの話かなと思いながら聴いていたんですが、タネを選ぶところ、染色体を削る話のところで花粉と卵を選んでたくさん組換えをつくってという話を聴いていると、そういう意味では遺伝子組換え技術ではなく従来の育種技術、交配技術を使ってやっているというふうなことで、私の頭の中で遺伝子組換え技術、DNA組換え技術ではないのではないかということで混乱しているんですが。先生が今、つくられているイネは定義で言うとイネ組換えのイネなんでしょうか、従来型の育種技術を用いたイネで、これが食料品になったと、遺伝子組換え食品になるかどうかを教えていただきたいと思います。」
A.はい、私たちの手法は遺伝子組換えを使いません。今までの育種と全く変わらず、従来の育種と同じように交配して子どもをつくって、その中から選抜するというやり方です。
ただ私たちが遺伝子組換えを危ないとか、よくない技術だと思っているわけでは決してありません。私は、育種の方向は2つあると思っています。
これまで育種が取り扱ってきた現象は、残念ながらメンデルの法則には従わないものが非常に多かったので、メンデルの法則の理論で予想を立てて育種をやっていくことが、できなかったんです。では、育種は何をやってきたか。膨大な数の交配をやって、その中からいいものを勘と目で選んできたのです。ある人は、育種はアートだと言っていますが、そういう意味ではセンスのある人しかできない技術だったわけです。そこで、私たちが言いたいことは、科学をつかって、「こういうものをつくりたい、だからこれとこれを寄せ集めたらできるはずだ」 と論理的にものを考えると (私たちはこういう育種を、デザイン育種、テーラーメイド育種と呼んでいますが)、そういうことが実現できる時代になりましたということです。これまでの育種と全く同じ手法で新しいことができるということをお伝えしたかったわけです。
一方、組換えDNAを使った育種は全く別のものです。たとえばスギの花粉のアレルゲンをイネの中に入れ込んで米を食べると、花粉症が治るという研究をしている人が友だちにいます。この目的のためには、どうしてもスギの遺伝子をイネに入れないと、そういうものはつくれない。その場合はスギのDNAをとってきてイネに入れる。今のルールでいうと 「DNA組換え」 ということになって全く別の規定になってしまうんですが、それは全く新しい育種の手法で新しい未来があるんだろうというふうに、私たちは考えています。

司会 それではどうもありがとうございました。