松岡 最後に私たちが現在行っているピラミディング育種についてご紹介します (図32)。今日紹介した私たちが日常食べているイネは、実は人類が作り上げた生物でして、これを栽培イネと呼びます。これは人類が1万年以上かけて作った生物で、人類にとって便利なように改良に改良を重ねられた生物といえます。ところが、この改良の過程で、野生のイネが持っていた良い性質を落としてきたことが分かってきました。それは例えば、病気や虫、ストレスに強い性質だったり、ちょっと不思議な感じがしますが、収量を多くする性質だったりします。
世界中には人類が利用していない野生イネがまだまだたくさん存在しており、それらには育種に役に立つ色々な優良な性質を持ったものが存在します (図33)。現在、私たちは野生イネの持つそのような優良な遺伝子をコシヒカリに入れていくことを行っています。それを図式化したのがこのスライドです。青色で示したコシヒカリの染色体に、赤で示したハバタキの高収量と草丈を短くする遺伝子領域を、これはもう既にできたわけですが、さらに黄色や緑や茶で示した野生イネの遺伝子領域を選択的に導入していくというやり方です。ここでポイントは、インドイネや野生イネはコシヒカリにとって都合の悪い遺伝子も数多く含みますから、優良遺伝子領域だけをピンポイントで導入する必要があるということです。