11.実際に収量が増加するイネを作出する

松岡 さてこれまでで、イネのタネの数がどのように調節されているかをお話ししてきました。ここからは、このような研究をどのようにイネの収量増加に役立てるかをお話しします。Gn1遺伝子を取ってその性質を調べる時に、「ここだけハバタキ」 というイネを作りました (図23)。このここだけハバタキはほとんどコシヒカリとも言えます。というのは、この青い部分はコシヒカリの染色体になっているからです。そしてこの 「ここだけハバタキ」 はコシヒカリよりも30-40%収量が多くなっています。このほとんどコシヒカリの部分にはコシヒカリのおいしい遺伝子が乗っていて、ここだけハバタキの部分にタネを増やす遺伝子が乗っているわけですから、このイネは、コシヒカリのおいしさとハバタキの収量を併せ持つイネと言うことができます。

ですが、話はそんなに簡単ではありません。というのは、コシヒカリはただでさえ収穫の時期にはタネの重さに耐えかねて、ばたばた倒れてしまい、収穫が困難になります (図24)。その上に、タネの数を増やしたら、頭が重くなって100%倒れてしまうことになります。これでは実際の農業には役に立ちません。実際、ハバタキの草の形を見てみると、コシヒカリに比べて背が低く、倒れにくい形になっています (図25)。つまり、実だけを増やしてもダメで実を増やしたら、それを支える身体もそれに見合ったものにする必要があるわけです。

前を読む 次を読む


※ 本ホームページの市民講座に収録された研究内容・図表は日本植物生理学会に帰属します。これらの研究内容・図表を元に作成した著作に新たなコピーライトの設定は認めません。二次利用に際して、研究内容・図表の提供者である講演者のクレジット保護にご配慮ください。