6.質的形質と量的形質

松岡 このように、生物の持っている性質・形質にはメンデルの法則に従う形質と従わない形質の2つがあります。ここで、メンデルの法則に従う形質を質的な形質といい、従わないものを量的な形質と呼びます。質的な形質の場合、さっきのエンドウの花の色のように、赤い色素を作る遺伝子があるかないかで決まるので、上のグラフのように、ない場合は白、1つ持っても2つ持っても赤と言うことになります。一方、量的な形質の場合、作用する遺伝子が複数あるために、下のグラフのように、Aの遺伝子だけが作用する場合、AとBの遺伝子が作用する場合、B、C、Dの場合、と言ったように、色々な組み合わせで遺伝子が作用したりしなかったりするため、作用の強さは連続的になり、上のようにある・なし、と2つに分けることができなくなります (図11)。

それでは、このようなメンデルの法則に従わない量的形質を調べるためにはどうしたら良いのでしょうか。実はこれは非常に難しいことで、ごく最近までできませんでした。それができるようになったのは、最近精力的に行われているゲノム研究と呼ばれる研究の成果です。このイネのゲノム研究というのは、イネの12本の染色体上にある全てのDNA情報を、日本をはじめとした10ヵ国の国際共同研究により解読してしまおうとするプロジェクトで、この研究には愛知県が開発した日本晴という品種が用いられました。我が国はこのプロジェクトにおいて終始先導的な役割を果たして、結局、全DNA配列の55%の解読に貢献しました (図12)。その結果、私たちはこのイネゲノム情報を使って、これまで研究できなかった色々なことを調べることができるようになりました。

私たちは、このイネゲノム情報を使って、タネの数を決める遺伝子がいくつ、染色体のどの当たりにあるのかについて調べました。この方法については少し難しいので省略し、結論だけをお話しすると、イネにはタネの数を決める遺伝子が5つあることがわかりました (図13)。また、その遺伝子がある場所は、イネの12セットの染色体の1、4、10、12番目に乗っていることがわかりました。このうち、私たちが注目したのは1番の染色体に乗っている遺伝子でした。なぜこの遺伝子に注目したかというと、この遺伝子が5つのうちで一番タネの数を増やすのに大きな貢献をすると予想されたからです。この遺伝子を1番の遺伝子という意味を込めて、タネの数、grain number、の1ということでGn1 と名付けました。

前を読む 次を読む


※ 本ホームページの市民講座に収録された研究内容・図表は日本植物生理学会に帰属します。これらの研究内容・図表を元に作成した著作に新たなコピーライトの設定は認めません。二次利用に際して、研究内容・図表の提供者である講演者のクレジット保護にご配慮ください。