松岡 今日の私のお話には、遺伝の基礎知識がどうしても必要なので、イネの収量の話をする前に、少しだけメンデルの法則を説明します。メンデルは19世紀のチェコで、修道院のお庭係をやっていた人です。彼はそこでエンドウの栽培をやっていて、面白い法則に気が付きました。それは、赤い花のエンドウと白い花のエンドウを掛け合わせて、つまり交配させて子供を作ると、その子供のエンドウはすべて赤い花を付けること、また、この子供の代の赤い花のエンドウ同士を掛け合わせると、つまり孫の代には不思議なことに赤い花のエンドウと白い花のエンドウが 3:1 の比率で出てくる、と言うことでした (図7)。この現象を彼は次のように説明しました。赤い花エンドウは赤い色を作る遺伝子を持っていて、つまりred遺伝子ラージ R を持っていて、白い花のエンドウはred遺伝子が壊れているつまりスモール r と考えます。子供は両親の遺伝子を受け継ぐので、働く遺伝子 R と壊れた遺伝子 r をそれぞれ受け継ぎ、その結果、働く遺伝子が花の色を赤くします。このとき赤い色が優性の性質と言います。一方、孫の代になると、子供の代が持つ働く遺伝子と壊れた遺伝子を受け継ぎますが、この受け継ぎ方は、働く遺伝子RとRを持つ孫が 1/4、働く遺伝子 R と壊れた遺伝子 r を持つ孫が 2/4、つまり 1/2、これらのエンドウはみんな赤い花を付けます。最後に、壊れた遺伝子rだけを持つエンドウ、つまり白い花が 1/4 出てくる、と考えたわけです。この考えは、当時は画期的な考えで、ほとんどの人に理解されず、メンデルの死後、約50年近く立って、初めて大発見だったことに研究者が気付きました。