6.動物のクローンと胚性幹細胞

長谷部 ところが1996年くらいからちょっと様子が変わってきていましてね、それまで植物だけが個体を1つの細胞からつくれるという話だったんですが、これが動物でできちゃったんですね。クローン羊のドリーで話題になった。ドリーの卵の細胞の中に核があって核の中に遺伝子が入っています、DNAが。卵の核を取り除いて身体の細胞の核を移植すると親と同じクローン動物ができる。最近、ニュースでクローン人間ができる可能性があるという話がありましたね。それと同じ原理です。これができてしまった。動物でも1つの細胞から親と同じものができるんじゃないか。ただこの時点ではクローン動物は親と同じじゃなかったんです。ドリーは親より早く死んじゃう。どういうわけか。いろんな理由があるんですが。やはり動物のクローンはできないんじゃないかとこの10年くらい思われていたんですね。

ところがまた世の中、変わりまして、再生医療が非常に大事だということで、昨年、状況が大きく変わった。動物でもクローンができそうだということがわかってきた。ニュースで聞かれたかと思いますが、ES細胞、胚性幹細胞があります。幹細胞はある1つの細胞があって、その細胞が、細胞は分裂して増えます。増える時に自分自身と、あるいはそれと違うような細胞をつくる。そういう性質を持ったものを幹細胞と言います。自分はいつも維持して、違うものをどんどんつくっていく。そういう細胞を幹細胞と言うんです。これはある意味で受精卵、お父さんとお母さんの精子と卵子がくっついてできる1つの細胞です、それから身体全部をつくる、それにちょっと性質が似ている。これをネズミの皮膚の細胞にある特定の刺激を与える。そうするとこれが受精卵のような胚性幹細胞になってしまって、この細胞をお母さんのおなかに入れてやると、お母さんと同じ子どもが生まれてくる。いくつか複雑な実験が必要なんですが。というわけで動物の細胞でも、植物と同じように身体の1つの細胞から個体をつくることができるということがわかってきた。だとすると、これは研究で大事な点ですが、問題点は一体何だろうか。研究する場合には不思議なことがある。ニョキニョキ出てくるということとか、親と同じ個体をつくれる。これは不思議です。一体、解くべき問題は何なのだろうか。問題をつくるのが科学の最初のステップなわけです。僕らはこれについてこういう3つの問題点を持って研究を進めていこうと考えています (図7)。

前を読む 次を読む


※ 本ホームページの市民講座に収録された研究内容・図表は日本植物生理学会に帰属します。これらの研究内容・図表を元に作成した著作に新たなコピーライトの設定は認めません。二次利用に際して、研究内容・図表の提供者である講演者のクレジット保護にご配慮ください。