長谷部 こういう実験操作をして遺伝子を組み換える。再生です。この再生現象、1つの細胞から自分自身を再生させる。このメカニズムはどうなっているかを研究していこうと。これは実はすごく昔からある研究テーマで、1900年代始めから多くの人が興味を持ち始めたんですが、植物の分化全能性という現象です。性質というか。全能、すべての能力を植物細胞は皆、持っている。たとえば1958年の論文でスチュワードさん。ニンジンの細胞を培養してやる。ひとつひとつの丸が細胞です。僕らの体は小さな細胞からできている。1つの細胞からニンジンができることを、スチュワードさんは実験的に証明したんです。この頃から植物の細胞というのは1つの細胞から個体を再生できるということがわかった。僕らはできないわけです。ここらへんの毛を持ってきたり、鼻毛を抜いても孫悟空はなれるけど、僕はどう考えても再生できない。プラナリアとかイモリも再生能力が高い。だけどイモリの足をもいできて、イモリの本体から足は生えるんですが、とった足から体が生えるということはないわけですね。ところが植物はそれができちゃう。僕らそれを結構使っていて、園芸で葉挿しがありますよね。あれはそうです。葉をとってきて差してやるとまた花が咲く。なんで植物はそんなことができるんだ。すごく不思議だったんですね。実は未だに謎が解けていない。今日、それをどうやって解くかを一緒に考えていただきたいんです。『サイエンス』 という雑誌が125年を記念して今、残っている科学の大きな問題は何だろう。トップ25をあげようと。10番以内に出てくるんです。1つの植物細胞がどうして個体になれるのか、未だにわからない。すごく不思議だというわけです。