10.重力感受の場を視る!

森田 そこで重力の感受細胞をもっと見たい。重力の方向を変えてやった時に細胞の中でアミロプラストと液胞に何がおこるかを見たいわけです。これには、生きた細胞を使わないと見えません。それから、重力というのはいつも地球の中心に向かっていますが、これが実験を難しくします。方向を変える前と後を観察して比較したいのですが、重力は光と違って、点けたり消したりができない。常に同じ方向に重力がかかっている状態で、どうやったら重力の方向を変えて刺激の前後を観察できるかということになります。つまり、私たちがクリアしないといけない問題点は2つ。細胞の中を生きたまま見ることと、観察時の重力方向を制御すること。

最初の問題には、緑色に光るタンパク質を使いました (図8)。これを使うと生きたままタンパク質を観察できます。内皮でだけ、見たいものを光らせました。この図の真ん中と右は茎を縦切りにした図ですが、黄色い線の部分が内皮です。内皮でだけ、液胞膜に局在するタンパク質にGFPをくっつけた融合タンパク質を発現させます。どんなふうに見えるか。図の右の一つ一つの細胞の緑色が液胞膜で、赤色がアミロプラスト。これで内皮細胞の液胞膜とアミロプラストを生きたまま観察できる。まず1つ問題をクリアしました。

次に重力刺激の前後で観察したい。これはどうやったらいいか。正立顕微鏡に試料を寝かせるようにおいて観察します。重力の方向は常に下ですので、これでは試料に対して重力の方向は横の方向にしかかからない。これでは話になりません。それではこの顕微鏡をこのまま横に倒してやったら、試料はどうなるか。試料を立った状態にできます。これで、試料を乗せるステージを丸くして、回転させてやると、試料を立てた時と水平に倒した時の状態を比較して観察できるだろう、と考えました。顕微鏡の会社の人に、何とか横に倒してくれないかとお願いして、そういう装置をつくりました。ガッチリ足場を組んだ上に横に倒した顕微鏡を設置する。そこにいろんな装置をつけて何とかして重力刺激の前と後の生きた細胞の様子を観察する。こうして見た像がこれです (図9)。

白く見える粒々がアミロプラストです (図9)。この映像は100倍速で見ています。粒々は概ね下にいるんですが、ずーっと下におとなしく沈んでいるわけではないらしいというのが、観察の結果からわかってきました。こんなふうにかなり飛び跳ねて動いているものもあるし、下の方でモゾモゾしているのもある。試料を横に倒して重力の方向を変えると、どうなるか。方向が変わると、アミロプラストは確かに位置をサアーッと変えて動いていきますが、これも常に重力の方向におとなしく沈んでいくわけではないということが見えてきました。

さて先程のsgr4 というのは重力屈性異常変異体ですが (図6)、内皮細胞を横に倒した状態で見てみると、アミロプラストは細胞の両側にひっついたまま、ほとんど動かないことがわかりました。重力屈性をしないこれらの変異体では、どうもアミロプラストが動けなくなっているみたいだということがわかりました。SGR4 というのは液胞の機能に関係する遺伝子でした。そこで、今度は液胞膜を見てやると、野生型の場合、袋が形を変えながら激しくダイナミックに動いています。小さい袋のなかには、白い影のように見えるアミロプラストがあり、液胞の袋に取り囲まれています。チューブ状の構造が出てきますが、そのなかをアミロプラストが動いていく様子も観察されます。

一方でsgr4 変異体の方はちょっと異常な液胞が観察されました。小さい袋やチューブ状の構造が、ほとんど形成されないことがわかりました。こういう結果から、私たちは次のように考えています。これら3つの遺伝子は、液胞の機能や形成にかかわるタンパク質をつくるものでした。これらの遺伝子の変異体では、重力屈性ができず、内皮細胞の液胞膜が形を変えたり、動いたりしませんでした。また、同時にアミロプラストの移動もありませんでした。つまり、アミロプラストの移動というものは重力の感受にかなり重要なのですが、そのためにはこれらの遺伝子が調節するような液胞の機能や液胞膜のダイミナックな動きというものが、どうも必要らしいということがわかってきたわけです。

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