8.重力感受をする場所

森田 次に、重力屈性異常変異体からどんなことがわかってきたかをお話します。変異体の原因となる遺伝子はどういう働きをするのか。それぞれの遺伝子が重力屈性反応のどういうプロセス、素過程に関係しているかを探っていく必要があります(図4)。まず (1) 重力屈性反応は重力を感じ取るところからスタートします。それから (2) 重力方向の変化という物理的な刺激を、細胞の中に通じる信号に変えてやります。それから (3) その重力方向の変化を感じ取った細胞から、他の細胞、組織、器官全体へ信号を伝達します。そして (4) 最後に器官が偏差成長をして茎が曲がることになります。9個の遺伝子が、それぞれどこに関わるかを調べるわけです。今日は詳しく申し上げませんが、どうもここ (4) 器官の偏差成長、ではなさそうだということがわかりました。それでは、他の3つのうちのどこだろうということになります。

まず、オレンジ色で示した遺伝子は、重力を感受する場所をつくることに関わりそうだとわかりました。そのことをご紹介したいと思います。これらの変異体は、水平に倒して3時間後の茎では、野生型は上に曲がっているのに対して、全く曲がりません。茎のこの部分を縦切りにした顕微鏡写真を、間違い探しのように、よくよく野生型と変異体を比べてみると、野生型にある一部分が、変異体ではないことがわかりました。この部分は内皮と呼ばれる組織です。つまり内皮がなくなると重力屈性が全くできない。ということはシロイヌナズナの花茎では内皮が重力屈性に必要であるという結論が出せます。

この内皮の1つの細胞を見てみますと、この細胞の下の方に粒々があるのがわかると思います (図5)。これはアミロプラストと呼ばれる色素体です。葉緑体も色素体の一種ですが、アミロプラストは葉緑体とは分化形態の違う、デンプンをたくさんため込んだ色素体です。内皮細胞ではアミロプラストが必ず重力の方向にある。実は根の方で重力の感受細胞については研究が昔から進んでいます。根の先端には根冠と呼ばれる組織があります。その中の細胞の中には重力の方向に沈むアミロプラストがあります。こういう観察結果から、次のような仮説が出されていました。デンプンを蓄積したアミロプラストが常に重力の方向に動く平衡石として働いて、重力方向を感知することができるのではないかという仮説です。この仮説と、私たちが発見したことは非常によく合っています。以前はシロイヌナズナの茎ではどこが重力感受に必要かということがわかっていなかったのですが、内皮細胞ではアミロプラストが常に重力の方向に沈んでいて、さらに内皮が無ければ重力屈性ができない。ということは茎の重力感受細胞は内皮細胞であると言ってよかろうということになるわけです。そうすると次は、茎においての重力感受の場は内皮細胞であるので、内皮細胞の中でいったい何が起こっているか。そこでは重力の感受とシグナルの形成が起こるだろうと考えられます (図4)。

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