7.シロイヌナズナを使った研究

森田 シロイヌナズナの花茎、茎に注目して研究を行っています。重力屈性反応を見ていただきましょう (図1)。このムービーは3000倍速です。こういうふうに横に倒した植物はグーッと上に向かって曲がっていきます。横に植物を倒してから曲がったのが肉眼ではっきりわかるのがおよそ30分です。それから上に真っ直ぐ立つのが90分、1時間半くらいで上を向いて方向を変えている。わりに速い反応です。こういう反応かどういうふうにして行われているのか。どうやって分子メカニズムを探ったらいいか。

分子メカニズムというと遺伝子の機能と深い関わりがあります。遺伝子はDNAの上にあります。遺伝子と遺伝子の間の部分には、いつ、どのくらい、この遺伝子はちゃんとタンパク質をつくりなさいよと指令する部分があります。遺伝子から、RNAがつくられて、さらにタンパク質が作られます。これらたくさんの種類のタンパク質の働きで生き物の身体がつくられ、調節されるわけです。もし何かの遺伝子に異常が起きて、そのタンパク質をつくることができなくなった場合、少し正常ではない生物になることがあります。これと同じような考え方で重力屈性を考えてみます (図2)。重力屈性を正しく行うためにはいろいろな遺伝子が、それぞれかかわりあっています。これを詳しく調べる研究方法としては、重力屈性がうまくできない、なんかへんだなという突然変異体 (ミュータント) を探します。そして、その原因となる遺伝子について調べていくという方法で重力屈性の研究を行っています。ある遺伝子が機能しないと、重力屈性がうまくいかないよという変異体を探す。その遺伝子は重力屈性には大切な遺伝子だ。その遺伝子の機能を詳しく調べると、分子メカニズムが分かるだろう。そういう理屈で研究を進めています。

使っているのはシロイヌナズナです。変異体はどうやって手に入れるのか。私たちが自分で探します (図3)。まず、シロイヌナズナに変異源処理をします。放射線を与えたり、化学物質を与えたりして遺伝子にランダムに傷をつけてやる。傷がついてないものもあれば、ついているものもある。傷のつき方が違うものをたくさんつくってやって、育てる。私たちは、その中からいつまでも上に起き上がってこないものを探します。たくさんの中から探してきます。この絵では、赤い☆の変異を持ったもの、これが重力屈性しないものです。赤い☆を持った植物のタネをとって蒔いてやると、確かに次の世代は皆、上に曲がってこない。こんなふうに探して、ようやくこれは重力屈性異常変異体だろうというものが手に入るわけです。

こういうふうにして重力屈性をしない変異体をとると、自分で名前をつけます。地上部の重力屈性のことを英語でshoot gravitropismというので、そういう名前 (sgr) をつけています。これまでに、1番~9番まで変異体を9種類見つけています (図4)。今後の話の中でこんがらがるかもしれませんので、表記の仕方についてご説明しますと、変異体の名前は、頭文字を小文字斜体 (sgr) で表します。その原因になる遺伝子は大文字の斜体 (SGR )、タンパク質は普通の大文字 (SGR) で表しています。

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