森田 重力屈性とはどういうものか。皆さん、経験的にご存じだと思いますが、根っこは地中に、重力の方向に向かって曲がっていく。これを正の重力屈性と言います。一方、胚軸であったり、茎であったり、地上部の器官は重力とは反対の方、空の方向に向かって曲がっていく。これを負の重力屈性と言います。曲がるということは器官の内部の成長の度合いに差が生じている。つまり偏差成長をすることで器官が曲がっていくことになるわけです。実際には、空に向かって曲がるだけではなく、芽生えた後、重力の方向を知って上の方向にまっすぐ伸びていく。姿勢をずっと保っていくことに重力屈性は使われているわけです。植物は、自分のからだが重力に対してどちらに動いているかを認識して、成長をコントロールすることができるわけです。
こういうふうに考えると、植物は重力を指標にした姿勢制御機構を持っていると考えることもできるわけです。動物ももちろん姿勢制御機構を持っています。それは感覚器官、私たちヒトだと耳の奥にあるような感覚器官を使って、神経、運動器官を使うことで、重力に対して常に一定の姿勢を保つ姿勢制御機構があります。感覚器官、神経、運動器官は植物にはありませんので、多分、植物は動物と全く違うやり方で重力の方向の認識と姿勢制御を行うと考えられます。一体どうやってそういうことをやっているのか、分子メカニズムが知りたいわけです。重力屈性の分子メカニズムです。どういうポイントを知りたいか。重力方向の認識機構です。植物は、どこで、どんなふうに重力の方向を感じ取っているのか。それから、重力刺激に応答した姿勢制御機構です。方向を感じた後に、どうやって器官全体に刺激を伝えて真っ直ぐ立つ、空に向かって曲がっていくということを行うのか。こういうことを何としかして分子の言葉で答えを見つけたいと、私は考えているわけです。